再生医療
P R P療法
手を怪我しても数日間消毒していると、自然に治ります。私たちの身体は自己修復する力を持っています。
その自己修復力を利用して、自分の血液から様々な身体を治す成分を取り出し、病気のところに注射する新しい治療がPRP療法です。当院で行っているPRP療法についてご説明いたします。
PRP療法の概要
PRP療法は、再生医療のひとつです。血小板は血を止める機能を担うことで知られていますが、それだけではなく、傷んだ組織の修復を促す成長因子と呼ばれる物質が含まれています。このような血小板が持つ傷んだ組織の修復を促す力を借りて行う治療がPRP療法です。2010年頃から欧米では靭帯損傷、肉離れ、腱炎などスポーツで生じるけがの治療に応用されており、ニューヨークヤンキースの田中将大投手や、エンジェルスの大谷翔平投野手が治療を受けたことで、日本でもPRP療法が注目されるきっかけになりました。
治療では、まず患者さん自身の血液を遠心分離し、血小板を多く含む血漿(血液中の液体成分)を抽出します。この血小板を多く含む血漿のことをPRP(Platelet-Rich Plasma:多血小板血漿)といいます。PRPを患部に注入し、痛みの軽減や損傷した組織の修復を図ります。
PRP療法などの再生医療を提供する場合、再生医療等安全性確保法(自由診療・臨床研究の枠組みで再生医療を行うための法律)のもと、特定認定委員会の厳しい審査を通過し、治療提供計画が厚生労働省に受理された医療機関だけが、再生医療を提供することができます。白井聖仁会病院は厚労省第二種再生医療等提供計画番号を取得しています
変形性ひざ関節症の
P R P療法
変形性関節症では、変形の進行に伴い、軟骨がすり減ったり、半月板が傷んだり、炎症が起きてひざに水がたまったりします。
従来の治療法は、軽度であれば痛み止めやヒアルロン酸注射など保存療法を行い、症状が進行して骨の変形が起こってしまった場合は、人工関節の手術を中心に手術療法をおこなってきました。PRP療法は、傷んだ組織の修復を促したり、関節の炎症を抑制したりする効果が期待できますので、ヒアルロン酸注射などで痛みが改善しない方、様々な事情で手術療法は避けたいと考える方にとって、保存療法と手術療法の間の治療法として有効だと考えられています。
血小板自体は軟骨や半月板にはならない細胞のため、完全に軟骨が無くなってしまった部分に軟骨を再生することは不可能です。PRP療法では軟骨を再生させてO脚を矯正することは難しいと考えますが、膝の痛みを抑制することは可能と考えられています。
PRP療法は自分の血液を用いた治療ですので、薬物のように副作用を起こすことが少なく、安全に受けていただくことができます。
ニュース
PRP療法がメディアに取り上げられました。
時事メディカル
日刊ゲンダイヘルスケア
メディカル
トリビューン
変形性膝関節症のPRP療法
手術前の新たな選択肢に
膝が痛いが手術はイヤだ…
注射1本でOKの
新治療PRPとは?
「変形性膝関節症のPRP療法」の記事が
5紙に紹介されました。
よくある質問
副作用はありませんか?
ご自身の体に流れている血液を採血し、本来傷を治す働きのある血小板などの成分を抽出・加工して少量注入するだけなので、重い副作用は報告されていません。
一般的な注入治療と同じく、痛み、赤み、腫れ、灼熱感、皮下出血などの副作用がありますが、多くは一時的で3日程度で改善傾向が見られます。症状の強い場合は、医師にご相談ください。
日常生活の制限はありますか?
普段の日常生活を送っていただいて問題ありません。治療当日のマッサージや激しい運動や飲酒、治療部位へ刺激が加わるようなことは控えてください。
治療を受けられない方は?
血液採取を行い、感染症検査(HIV・HBV・HCV・梅毒・HTLV‐1)で陽性反応が出た方は、治療を受けていただくことはできません。その場合、血液検査費用のみご負担いただきますのであらかじめご了承ください。
効果はどのくらいで現れますか?
効果は治療前のお膝の状態にもよりますが、基本的には3〜6か月程度で多くの方が痛みが改善したと実感されています。早い方ですと2週間〜1ヵ月ほどで実感されることもあります。
高齢ですが、治療を受けることができますか?
受けることができます。 からだに負担の少ない治療なので、高齢の方でも治療を受けることができます。ただし、ひざ関節の破壊が進んでいるような重度の方は、年齢に関わりなく手術が適している場合もあるので、医師とよく相談することが大切です。
人工膝関節置換術が必要といわれました。P R P治療を試すことはできますか?
P R P治療は自由診療であり、手術適応だからといって受けることができない治療ではありません。感染症などの検査で問題がなければ投与は可能です。
しかし、P R P治療は100%効果がある治療法ではありません。国内の研究でも、軽度〜中等度の変形性膝関節症を対象にしても約3割の患者様が満足をしていないといった結果が報告されています。
患者様に現在の症状と治療に対する効果を十分にご理解いただいた上、手術ができない方・手術に踏み切れない方にとって、保存的治療と手術的治療を繋ぐ新しい治療法ですので、外来でご相談ください。
保険診療が適応されますか?
保険診療は適応されません。自費診療となります。
PRP治療には手術が必要か?
PRP治療は、ご自身の血液から抽出した成長因子をひざの関節内に注射器を使って注入するため、手術の必要はありません。注射は5分程で終了いたします。
P R P治療のスケジュールと費用
はじめにPRP治療の詳細について説明し、診察・レントゲン検査を行い、PRP療法の適応があるか検討します。PRP療法を希望される場合には、同意書をお渡しPRP治療を行う日を決定します。
PRP療法は、日本ではまだ保険診療として認められていません。そのため、治療を受ける方は自由診療となります。先進医療や高額医療の補助の対象とはなりませんのでご注意ください。当院では2種類の治療(PRP療法とPFC-FD™療法)を行っております。
PRP療法:採血を行い、その場でPRPを作成し注射を行います。4週間の間隔で3回注射を行います。1クール(3回注射)のPRP注射にかかる費用は片膝120,000円(税込)です。3回の治療を行ってから約3か月後に効果を判定します。
PFC-FD™療法:PFC-FD™は、血小板の力を活用する治療法であり、血小板由来成長因子濃縮液を凍結乾燥保存したものの商品名・サービス名となります。「PFC-FD」は、セルソースがPlatelet-Derived Factor Concentrate Freeze Dryという造語の頭文字から名付けました。
当院では2020年9月からPFC-FD™療法を導入しております。1回で50ml採血し、化学的に処理することで、血小板の中の成長因子や細胞修復因子を抽出します。通常のPRPと比較してより高濃度の成長因子や細胞修復因子の注射が作成できます。注射は1回で終わり、費用は片膝195,800円(税込)です。
効果が認められた方では、PRP療法を継続して行う方もいらっしゃいます。残念ながら効果がなかった方も、骨切り術や人工関節置換術などの手術加療を行う事も可能ですので担当医にご相談ください。
その他の注意点
注射後、一時的に痛みが出ることがありますが、数日で治りますので、通常通りの生活を送ってください。激しいスポーツは控えてください。
注射当日はシャワーのみ可能です、湯船にはつからないでください。
治療の結果や副作用などについて、個人情報を含まない範囲で医療の発展のため使用させていただくことがあります。
※PFC-FD™は、セルソース株式会社の提供する商標です。