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谷川英徳

骨粗鬆症をかんたんに学ぼう(編集中)


ここでは、骨粗鬆症について患者さんからよくある質問に答える形式で、わかりやすく説明します。


骨粗鬆症とはどんな病気?

骨粗鬆症の原因は?

骨粗鬆症の骨折の特徴

身近なことから骨粗鬆症を治療しよう

健康寿命を知ってますか?

ロコモティブシンドロームを知ってますか?


 

骨粗鬆症とはどんな病気?


骨粗鬆症(コツソショウショウ)とは骨がもろくなり、骨折しやすくなる病気です。骨粗鬆症により骨がもろくなると、つまずいて手や肘をついた、くしゃみをした、椅子にドスンと座った、などのわずかな衝撃で骨折するようになります。

骨粗鬆症は高齢の女性に多くみられる疾患です。和歌山県の調査では、60代女性の2割に、70代女性では4割に骨粗鬆症(大腿骨頸部で測定)を認めました。男性でも加齢とともに骨は弱くなり、70代男性の2割に骨粗鬆症を認めました*1。高齢化が進む日本には約1300万人の骨粗鬆症患者がいると推定されていますが、骨粗鬆症の治療を受けている患者は200万人しかいません*2。

骨粗鬆症は骨折をおこすまでは症状に乏しいため、検査を受けておらず診断されていない患者がたくさんいます。骨密度検査は痛みもないですし数分で終わる検査です。女性は50歳を過ぎたら、男性は70歳を過ぎたら、一度検査をして自分の骨の量を知っておくのも良いでしょう。

*1 Yoshimura N, Muraki S, Oka H, Mabuchi A, En-yo Y, Yoshida M, Saika A, Yoshida H, Suzuki T, Yamamoto S, Ishibashi H, Kawaguchi H, Nakamura K, Akune T:Prevalence of knee osteoarthritis, lumbar spondylosis and osteoporosis in Japanese men and women:the research on osteoarthritis/ osteoporosis against disability study. J Bone Miner Metab 2009;27:620-628

*2 骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015年版.東京,ライフサイエンス出版,2015



骨粗鬆症の原因は?


骨粗鬆症は原因によって「原発性」と「続発性」の2つに分けられます。


骨粗鬆症の90%は原発性骨粗鬆症であり、主に閉経や加齢によって起こるものです。閉経後骨粗鬆症、男性骨粗鬆症、妊娠後骨粗鬆症などが含まれます。残りの10%は続発性骨粗鬆症であり、骨密度を低下させる病気や、薬剤によって起こります。例えば、副甲状腺機能亢進症、甲状腺機能亢進症、ステロイド薬内服、骨形成不全症、廃用症候群、関節リウマチ、慢性腎臓病、糖尿病など様々なものが含まれます。


骨粗鬆症の原因で最も多いのは閉経による女性ホルモンの減少です。女性ホルモンはカルシウムの吸収を助けたり、骨を壊す細胞による骨吸収を抑える作用があります。そのため、女性ホルモンが減少すると、骨密度が低下し、骨粗鬆症になりやすくなります。女性の骨量は20歳前後でピークに達し、50歳前後から急速に低下してゆきます。20歳までに食事や運動を行い、体の骨量をしっかりと増やしておくことが大切です。


皆さんは骨というとどんなものをイメージするでしょうか?「白くて硬いもの」を想像する人が多いと思います。しかし、骨は生きており、骨を作る細胞(骨芽細胞といいます)によって常に作られ、骨を壊す細胞(破骨細胞といいます)によって常に壊されています。これを骨の理モデリングといい、実は人の骨は3−5年で全て入れ替わっていると言われています。


骨芽細胞と破骨細胞のバランスが崩れて、骨を壊す力が強くなってしまうと、骨粗鬆症になってゆきます。骨芽細胞と破骨細胞の力については採血で知ることができますので、気になる人は病院で検査してもらうのも良いでしょう。


骨粗鬆症の骨折の特徴


骨粗鬆症による骨折は50歳代から始まります、この頃には転んで手首の骨を骨折することが多いです。これを橈骨遠位端骨折と呼び、骨粗鬆症が始まっていますよとお知らせしてくれる骨折なので「お知らせ骨折」とも呼びます。


60歳代になると、背中の骨を骨折することが増えてきます。これを脊椎圧迫骨折と呼びます。この骨折は3人に2人は痛みがなく、骨折に気が付かないため、「いつの間にか骨折」と呼ばれます。脊椎圧迫骨折が1個あると、2個目、3個目と骨折するリスクが高まることがわかっています(文献???)。骨折の数が増えてくると背中が曲がってしまい、腰痛、転びやすい、胃もたれ、足のしびれや麻痺などの症状が出るようになりますので、「最近身長が縮んできたな・・・」「「高いところに届かなくなってきたな・・・」と感じる人は病院で検査を受けてみることをお勧めします。


さらに70歳代になると、転んだ時に足の付け根(大腿骨)を骨折することが多くなります。多くは手術治療が必要となりますが、手術を行なっても元通りに歩けるようになるのは60%程度であり、自立した生活を送ることが困難になってしまうことも少なくありません*1。自宅に帰ることができず、施設での生活が必要になることもあります。大腿骨の骨折をおこさないよう、日頃から足腰の筋力を鍛えたり、自宅に手すりをつけたりといった転倒予防を行うことが大切です。


骨粗鬆症の骨折は手、背骨、大腿骨と加齢とともの起こりやすくなってゆきます。一つ目の骨折を起こした時に、次の骨折が起きないように、きちんと治療をしてゆくことが大切です。








身近なことから、骨粗鬆症を治療しよう!


骨粗鬆症の治療は運動、食事、日光、薬の3本柱です。


骨粗鬆症と診断されたら医師から薬が処方されます。骨粗鬆症の治療薬には大きく分けて3種類、「骨となる栄養を補助する薬」「骨を作る力を高める薬」「骨を壊す力を弱める薬」があります。骨粗鬆症の重症度や体の状態に合わせて医師が適切な薬を処方します。

運動は骨を強くする、転倒を予防するために非常に効果的です。


ウォーキングは骨密度を上昇させる効果がありますし、背骨の骨折予防には背筋を鍛える運動が効果的です。さらに、転倒予防には片足起立運動や太極拳などが効果的であることがわかっています。何歳になっても運動を行えば筋力は増加します。「継続は力なり」ですから、無理のない範囲で運動を継続してゆくことが大切だと思います。




食事も骨粗鬆症の予防には重要です。骨の元となる栄養素として最も重要なのはカルシウムです。ビタミンDは体内にカルシウムを吸収するために必要ですし、骨の質を高めるためにはビタミンKやタンパク質が重要です。骨粗鬆症ガイドラインでは、毎日カルシウムは700-800mg、ビタミンDは10-20μg、ビタミンKは250-300mg摂取しましょうと推奨されています。日本人のカルシウム摂取量は毎日約200mg不足していると言われています。コップ1杯の牛乳には約200mgのカルシウムが含まれていますので、苦手でなければ毎日のご飯に取り入れてみましょう。


ビタミンDも日本人の平均摂取量は不足しています。骨粗鬆症患者95名を採血した結果、ビタミンDが充足していたのはたったの2%、不足が18%、欠乏が80%という報告もあります。ビタミンDはお魚やきのこ類に含まれます。


さらに、ビタミンDは日光に当たることで、体内で作ることができます。日差しの強い夏は木陰で30分、日差しの弱い冬は1時間ほど日光浴をすることが推奨されています。さらに、日光浴をすると脳からセロトニンが放出されるので、ストレス解消・集中力アップ・気持ちが明るくなるなどの効果もあります


骨粗鬆症に悪影響を及ぼす食事についても触れておきましょう。リンはカルシウムと同様に骨に欠かせない成分ですが、摂りすぎるとカルシウムの吸収を抑えてしまいます。特に加工食品や保存料には必要以上の無機リンが含まれていることが多いので注意が必要です。コーヒーやアルコールは適量なら問題ありませんし、食欲が増せば栄養もそれだけ多く摂取できるので良い影響もあります。しかし、多量に摂取すると利尿作用があるのでカルシウム不足になりますので注意しましょう。最後に、食事ではないですが、タバコは胃腸の働きを抑え、カルシウムの吸収を妨げてしまいますし、女性ホルモンの分泌も抑えてしまいます。無理な喫煙でストレスを溜めるのも良くありませんが、できる範囲で減らしてゆくのが望ましいでしょう。



健康寿命を知ってますか?


日本は世界でもトップクラスの長寿国で、2021年の日本人の平均寿命は男性が81.47歳、女性が87.57歳です*1。高齢化に伴い、骨粗鬆症患者も増加し、日本では約1300万人の骨粗鬆症患者がいると推定されています*2。


平均寿命も大切ですが、最近では、健康で自立した生活を送れる期間をあらわす「健康寿命」に対する関心が高まっています。日本人の平均寿命と健康寿命の差を比べてみますと、男性では約9年、女性は約12年もの差があります。つまり、健康でイキイキとした人生を送りたいと誰しも願うものですが、実際には人生の最後の10年間は、誰かに支えられながら生きていくことになります。


介護が必要になった原因については、「認知症」が18.7%と最も多く、次いで、「脳血管疾患(脳卒中)」15.1%、「高齢による衰弱」13.8%、「骨折・転倒」12.5%となっています*3。骨粗鬆症により骨が弱くなり、背中や大腿骨を骨折すると、QOL(生活の質)が急激に低下し、要介護の状態に近づきます。骨粗鬆症を予防して、健康寿命を伸ばしましょう。


*1 厚生労働省「簡易生命表(令和3年)」

*2 骨粗鬆症ガイドライン2015

*3 内閣府 高齢社会白書(令和元年)


ロコモティブシンドローム(運動器症候群:通称ロコモ)を知ってますか?


加齢によって、体を動かすときに必要な、骨や筋肉、軟骨、関節といった運動器に障害が生じると、日常生活の動作(歩く、立つ、座るなど…)が困難になり、やがて寝たきりになってしまう可能性が高まります。ロコモティブシンドローム(ロコモ:運動器症候群)は、2007年に日本整形外科学会が提唱した概念で、「運動器の機能が衰えて、要介護や寝たきりになるリスクの高い状態」を表します。


現在ロコモの人口は予備軍も含めて4700万人と言われています*1。ロコモに特に関係が深い疾患は、骨の病気(骨粗鬆症)、膝の病気(変形性膝関節症)、腰の病気(変形性腰椎症)と考えられており、それぞれの病気の推計人口は、骨粗鬆症は1300万人、変形性膝関節症は2530万人、変形性腰椎症は3790万人と報告されています。


ロコモティブシンドロームを予防することは骨粗鬆症を予防することにも繋がります。日本整形外科学会のホームページには、自分がロコモかどうかを知るための「ロコチェック」、そしてロコモを防ぐための「ロコトレ」運動が紹介されています。簡単に自分で試すことができますので、自分や親がロコモになっていないかどうか、一度チェックしてみては如何でしょうか?


*1 Yoshimura N, Muraki S, Oka H, et al.: Prevalence of knee osteoarthritis, lumbar spondylosis, and osteoporosis in Japanese men and women: the research on osteoarthritis/osteoporosis against disability study. J Bone Miner Metab. (2009) 27(5):620-8.





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