ここでは、急に起こる肩の激痛で有名な石灰沈着性肩関節炎についてお話しいたします。
石灰沈着性肩関節炎の症状は?
夜間に突然生じる激烈な肩関節の疼痛で始まることが多いです。痛みが非常に激しいのが特徴で、ほとんど肩を動かすことが出来なくなります。五十肩(肩関節周囲炎)や腱板断裂はある程度肩を動かすことが可能であるという点が、石灰沈着性肩関節炎と異なります。
発症後1~4週、強い症状を呈する急性期を経て治らない場合は、慢性期へと続いてゆきます。慢性期には五十肩と似た以下のような症状が数ヶ月続きます。
・服を脱ぐときや着るときに痛む
・ズボンの後ろに手が届かない
・手が横に開かない
・髪を洗えない
・洗濯物を干す時に痛い
石灰沈着性肩関節炎はなぜ起こる?
肩を動かす筋肉の腱(腱板と言います)に骨の成分であるリン酸カルシウムが沈着し、炎症が生じるため肩が痛みます。原因は不明で、40~50歳代に多くみられます。
この石灰は、当初は濃厚なミルク状で、時がたつにつれ、練り歯磨き状、石膏(せっこう)状へと硬く変化していきます。石灰が、どんどんたまって膨らんでくると痛みが増してきます。そして、腱板から滑液包内に破れ出る時に激痛となります。
どうやって診断するの?
急に起きた肩の激痛で、ピクリとも肩が動かせない症状の場合はこの病気を疑います。レントゲン撮影によって腱板部分に石灰沈着の所見を確認する事によって診断できます。石灰沈着の位置や大きさ、腱板の状態を調べるためにCT検査や超音波検査、MRIを行うこともあります。
どうやって治療してゆくの?
急性期では、肩の石灰が溜まっている部分に注射をして、ミルク状の石灰を吸引します。同時に、抗炎症剤と局所麻酔薬を注入することで痛みを早く取ることができます。消炎鎮痛剤の内服も行います。ほとんどの場合、この治療で軽快しますが、時間が経つと、石灰沈着が石膏状に固くなり、痛みが持続することがあります。硬く膨らんだ石灰が肩の運動時に周囲と接触し、炎症が消失せず痛みが続きます。
慢性期には薬物療法の他にも、温熱療法(ホットパック、入浴など)や運動療法(拘縮予防や筋肉の強化)などのリハビリを行い治療してゆきます。
肩が痛く安静にしている状態が長期間続くと、関節が固まってしまい動きが悪くなる可能性があります。そのため3ヶ月〜半年以上痛みが続く場合は、手術で石灰を摘出することを検討します。
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